【シリーズ・連弾力を磨く:連弾曲をバランスよく仕上げる】

連弾曲をバランスよく仕上げるヒントを、作曲家の視点を織り交ぜながらお伝えしています。

[1] 自分が出している音をよく聞いて弾きたい

この気持ちはとてもよくわかります。自分が思うように弾けているのか、どのような音を出しているのか、常に確認したいのは当然ですね。複数パートを録音するようなレコーディング環境には、自分の音を一番大きくモニターできる仕組みがあるように、そのような欲求は自然なものです。

しかし、その欲求が要因となってバランスを崩してしまうケースがよくあります。異種楽器ならまだしも、同一鍵盤上で演奏される連弾曲では自分のパートに集中することはより難しくなります。そして音楽全体の中の役割よりもまずは自分の音に耳を傾けることが優先され、必要以上に大きく弾きがちです。その結果ダイナミクスは飽和状態に近づきます。オーディオボリュームとは違い、タッチに合わせて音色(ねいろ)も変わりますから、音楽の表情にも大きな影響があります。

『自分が感じている音量感と実際に聞こえているバランスとのギャップを知るには、録音してみるのが一番』です。私は自分の連弾作品を一人で多重録音することが多いのですが、プレイバックすると大抵の場合「ああ、こんなに強く弾かなくても実際にはとてもよく聞こえているものだ」と感じます。ふさわしいバランスで弾けるまで何度も録音し直すことが少なくありません。(続く…)

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