【シリーズ・連弾力を磨く:連弾曲をバランスよく仕上げる】

連弾曲をバランスよく仕上げるヒントを、作曲家の視点を織り交ぜながらお伝えしています。

[2] 譜面に書かれているダイナミクス記号の呪縛

音楽を構成するパーツ同士にコントラストを求めたり、意図的なバランス指定が曲の演出に有効と判断したりしたとき、作曲家は対比のための強弱記号を積極的に用います。しかし例えば自身の頭の中に響く音楽全体がmfのイメージで進行していれば、通常はプリモ、セコンド両方の大譜表の真ん中にmfをデデンと書くのみです。強弱記号を遵守したのみで魔法のようにまとまる曲はありません。一見そのように思える演奏があったとしても、巧みなバランスで一つの曲想にまとめられた演奏との差は歴然としています。必要な音域に必要な音符が書かれていれば、あとは曲を音として具現化していく演奏者の采配にゆだねられる部分が多くなります。

さらに、一つの記号で表されるダイナミクスにも幅がありますし、対比のために付された強弱記号についても、そのバランスにすぐ答えが出るというわけではありません。また、pであってもfであっても心象をうまく表すためのタッチはその時々で違ってくるでしょう。強弱記号は曲想を表す手段の一つとして書かれているという意識で曲に向かってみてください。

作曲家は理想のバランスを強弱記号に託しているわけではありませんし、託せないことをよく知っています。大切なことは、『書かれているダイナミクスは曲想や対比を表す指標であって、機械的なサインではない』ということです。強弱記号の再現に束縛されるのではなく、記号の向こう側にある曲想を思い描く楽しみを見つけてみてはいかがでしょうか。(続く…)

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